第三次世界大戦はもう始まっている ── エマニュエル・トッド

 

Book Review :エマニュエル・トッド第三次世界大戦はもう始まっている」

先月、エマニュエル・トッドの「第三次世界大戦はもう始まっている」が上梓された。

ウクライナ問題はアメリカにとっても死活問題である。

シカゴ大学教授のジョン・ミアシャイマーは「ロシアはアメリカやNATOよりも決然たる態度でこの戦争に臨むので、いかなる犠牲を払ってでもロシアが勝利するだろう」と結論した。しかし、トッドはミアシャイマーのこの点は誤っているとし、この問題はアメリカにとっても「死活問題」であるという。それは、アメリカは軍事と金融の面で世界覇権を握るなかで、実物経済の面では世界各地からの供給に依存しているが、そのシステム全体が崩壊する恐れがあるからだ。
今回のこの戦争は実質的にアメリカとロシアの戦争だ。これまで弱小国家にだけ戦争を仕掛けてきたアメリカが、大国であるロシアと戦っている。これは大きな歴史的転換点だ。

既に第三次世界大戦に突入し、ロシアは実質的に勝利している。中国はロシアを支援する。

トッドは、ウクライナ武装して事実上のNATOの加盟国にしたアメリカの政策こそが、ウクライナ問題を世界戦争化し、我々は既に第三次世界大戦に突入したという。
今年3月の時点で、ロシアはウクライナの領土の20%から25%を獲得し、しかも産業はそれらの地域に集中していて、ウクライナの産業地域の30%から40%になる。ロシアは既に実質的に勝利している。そして中国はロシアを支援し続ける。なぜか?

<「ロシアを支援しない」という決断を下すほど、中国の指導者が愚かだとは思えません。ロシアが倒されれば、どんな形にせよ、次に狙われるのは中国自身だからです。>(64頁)

日本のロシア制裁は滑稽。

<ここで日本は何をしようとしているのでしょうか。ヨーロッパで起きている戦争のために日本がロシアに政策を科すというのは、少し考えてみると滑稽なことです。(中略)
国連総会での対ロシア決議やG20での議論を見ても、世界の大半の国は、むしろの勝利を望んでいるようにも見えます。彼らは、「西洋の傲慢さ」にうんざりしているのです。今回の戦争において、西洋が勝利する可能性もありますが、同じだけ敗北する可能性もあるのです。>(89頁)

そして本書の最終章に収められた一月後(4月)のインタビューでは、トッドは戦争の行方についてより明快な表現をしている。
<この「経済的な消耗戦」において、私は西側陣営が勝利する方に賭ける気にはなりません。アメリカ、イギリス、フランスの対外貿易への依存度は途方もないレベルだからです。>(178頁)

武器だけ提供し、ウクライナ人を”人間の盾”にしてロシアと戦っているアメリ

アメリカは”支援”することで、実はウクライナを”破壊”している。

<戦争が終わった時、生き残ったウクライナ人たちは、どう感じるのでしょうか。少なくとも私がもしウクライナ人なら、アメリカに対して激しい憎悪を抱くはずです。というのも、「アメリカは血まみれの玩具のようにウクライナを利用した」ということこそ、すでに明らかな歴史的真実だからです。>(206頁)

そして状況は変わってきた。(毎日新聞佐藤優のインタビューとキッシンジャーの発言)

トッドのこの本での主張は以上だが、佐藤優は先日、毎日新聞のインタビューで、

  1. 戦局が変わった。ロシアが制圧する地域が増え「これではウクライナは勝てない」と米国関係者が見ている。
  2. もう一つが米国の世論調査ウクライナの戦争にどれくらいの人が関心を持っているかというと最近は3、4%にとどまっている。

と指摘し、「権力者にとって、この戦争は早く手じまいしないといけない、という流れになってきています」と述べている。

6月23日、ダボス会議にオンラインで登壇したキッシンジャーは、ロシアの侵攻前の状況をロシアとウクライナの国境とすることが望ましいと指摘した。2014年にロシアが併合したクリミア半島の奪還を断念する提言といえる。つまり、アメリカ政府に対して「ロシアを破滅に引き込むことは、もうムリだ。やめろ」とタオルを投げ込んだということだ。

トッドは「消耗戦」ゆえの長期戦を予想しているが、果たして早期停戦はあるのだろうか。

 

池上彰のこれ聞いていいですか?:佐藤優さん、ウクライナ侵攻を読み解く 「即時停戦へ加速を」 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

 

キッシンジャー氏「ウクライナ分割も」 大統領は猛反発: 日本経済新聞