Book Review 「ウクライナ戦争の嘘」

Book Review 「ウクライナ戦争の嘘」

 

本年6月に上梓された手嶋龍一と佐藤優による「ウクライナ戦争の噓」。

 

手嶋 9・11同時多発テロ事件を境に“テロルの世紀〟の幕が上がったと言われまし た。しかし、“プーチンの戦争”が起きて、世界はまた新たな時代に入ったように思います。ウクライナの戦いを機にパラダイムシフト、つまり重大な地殻変動が起き、世界の風景は変わりつつあります。
佐藤 にもかかわらず、日本の、より正確に言えば西側のメディアを覆っているのは、 一面的な価値観です。「これは民主主義を守る正義の戦いだ」と主張しているだけでは、 戦争の現状を膠着させ、その果てに核の使用というリスクをいたずらに高めるだけです。 西側陣営がいまウクライナ支援の根拠としているのが、「責任は100%、侵略に手を染めた独裁者プーチンにある」「ロシア権威主義”対自由民主主義陣営の戦いだ」というテーゼです。
<20~21頁>

 

戦争当事国の一方だけが100%正しいということはあり得ない。それぞれの国の内在的論理を知らなければ、和平への仲介はできない。

そして、ウクライナ戦争で世界のパラダイムシフトが起こり、さらにイスラエル紛争でそれが決定的になった。そのことを西側諸国と日本だけがわかってない。

 

佐藤 今回のウクライナ戦争では、欧米そして日本のメディアが、全面的に依拠している情報源は二つといっていい。アメリカの戦争研究所(ISW)とイギリスの国防省です。このISWの情報を中立的なものとして日本のメディアは全面的に頼って報道していますが、それ自体が大きな問題です。
<43頁>
 
2007年にレイセオン社とゼネラル・ダイナミックス社が資金提供を受けて、キンバリー・ケーガンによって設立されたアメリカ合衆国を拠点とする防衛と外交政策をメインに取り扱うシンクタンク。
米国国務次官のビクトリア・ヌーランドの夫であるロバート・ケーガンはキンバリーの兄である。ケーガン一家はいわゆる「ネオコン」の有力者として、アメリカにおいてたいへんよく知られる一族。