バチカン、植民地支配を正当化する「大航海時代の教義」を否定

 

バチカン、植民地支配を正当化する「大航海時代の教義」を否定

ALJAZEERA


先住民の数十年にわたる要求の後、バチカンは植民地時代の土地の奪取を支持した理論を「否定」した。

フランシスコ法王がカナダ・ヌナブトを訪問中、「発見の基本原則を撤回せよ」と書かれたサインを手にする人

植民地主義を正当化するために使用された「発見の基本原則」

 

昨年、ローマ法王フランシスコがカナダを訪問し、いわゆるレジデンシャル・スクール(カナダの先住民寄宿学校)での虐待にカトリック教会が関与したことを謝罪したことで、「発見の基本原則(Doctrine of Discovery)」の取り消しを求める声が大きくなっていた。

バチカンはついに「大航海時代の教義」を否定した。
1452年、いわゆる「ローマ教皇庁の勅書」に記されたこの教義は、ヨーロッパのキリスト教植民地主義者がアフリカとアメリカ大陸の先住民の土地を奪うことを正当化するために使われてきた。

バチカンの開発・教育局は木曜日の声明で、今日でも政府の政策や法律に影響を与えているこの理論(PDF)は、カトリック教会の教えには今後含まれないと述べた。
ローマ教皇庁の勅書は「競合する植民地権力によって、先住民に対する不道徳な行為を正当化するために政治的に操作され、時には教会当局の反対もなく実行された」と述べている。

「不確かな言葉ではなく、教会の教導権はすべての人間に与えられる敬意を支持する」-声明にはこう書かれている。「したがって、カトリック教会は法的・政治的な『発見の基本原則』として知られるようになったものを含め、先住民の固有の人権を認めないそれらの概念を否定する」

昨年の教皇のカナダ訪問時に撤廃の声が最高潮に達した。

 

先住民の指導者や地域社会の擁護者たちは、何十年もの間、カトリック教会に対し、ヨーロッパの植民地主義者はキリスト教徒によってまだ「発見」されていない領土を主張できるとする「発見の基本原則」の取り消しを求めてきた。
ローマ教皇庁は、ヨーロッパによるアフリカやアメリカ大陸の征服に重要な役割を果たし、その影響は今も先住民に及んでいる。
昨年、フランシスコ法王がカナダを訪問し、いわゆるレジデンシャル・スクールで起きた虐待にカトリック教会が果たした役割を謝罪したことで、「発見の基本原則」の撤廃を求める声が大きくなった。

1800年代後半から1990年代にかけて、カナダ全土で15万人以上のイヌイット、ファーストネーション(Native AmericanやAmerican Indianに代わる言葉)、メティ(フランス人またはイギリス人とカナダの先住人とのミックスド)の子どもたちが家族やコミュニティから連れ去られ、身体的、心理的、性的暴力が蔓延する強制同化施設に通うことを義務づけられた。

ハウデンサウニー渉外委員会は、ローマ法王の住宅学校の謝罪の際に、教会からもっとアクションが必要で、特に教皇勅書の取り消しが必要であるといった。
「行動なき先住民族への謝罪は空虚な言葉に過ぎない。バチカンはこれらの教皇庁の勅書を撤回し、裁判所や議会、世界の他の場所で、先住民の土地に対する権利を守るために立ち上がるべきだ」と、委員会は2022年7月の声明で述べていた。

ローマ法王フランシスコ、「嘆かわしい」住宅学校の虐待を謝罪

  ──  以上、Aljazeeraの記事より。

バチカンのホームページにも掲載

 

この発見の教義の撤廃は、<「発見の基本原則」に関する文化と教育および統合的人間開発の促進のための司教区の共同声明、30.03.2023>というタイトルでバチカンのホームページにも掲載された。

日本だって決して無関係ではない「発見の基本原則」

ローマ・カトリック教会の”僧兵”集団であるイエズス会フランシスコ・ザビエルらが、1549年に日本の土を踏んだ。
それ以降、江戸幕府による鎖国までの日本の歴史は、この「発見の基本原則」に基づくイエズス会による強力な日本の植民地政策推進と、織田信長豊臣秀吉徳川家康らとの壮絶な闘いの歴史でもあった。