バイデンは「クアッド」の対ロシア”準軍事同盟化”計画に失敗した。

 

 

バイデンは「クアッド」の対ロシア”準軍事同盟化”計画に失敗した。

 

本記事では、作家・元外務省主任分析官の佐藤優氏の毎日新聞(6月2日)への寄稿を紹介する。

 

ロシアのウクライナ侵攻で国連の安保理は機能していない。この状況を踏まえ、バイデン大統領はアメリカの世界戦略を遂行する新しい仕組みを作ろうとしている。それは、ヨーロッパにおいてはNATOの機能強化であり、インド・太平洋地域においては日米豪印による「クアッド」だ。

5月24日、東京でクアッドの首脳会談が行われた。

岸田文雄首相は24日の日米豪印4カ国の協力枠組み「クアッド」の首脳会合後、官邸で議長会見に臨んだ。産経新聞がその内容を報じた。
岸田首相はここで「この国際情勢については、各国の歴史的な経緯は地理的状況に鑑(かんが)みて同志国の間でも立場が完全に一致しないこともある。これは当然のことだ。」と述べている。

【クアッド首脳会合】首相、議長会見全文(下)「今オーカスに入るとは考えていない」 - 産経ニュース

 

佐藤氏はこの報道を受けこう述べる。

 

< これではロシアによるウクライナ侵攻に否を唱えることが、クアッドの基本的価値観の問題ではなく、各国の置かれた歴史的、地理的状況による差異に過ぎないと岸田氏が認識していることになってしまう。
 このような発言を記者会見の場ですることが外交的に適切であるかどうかは、とりあえず脇に置くとして、岸田氏は、クアッドがあえて曖昧にしていた問題を鮮明にしてしまった。
  インドにとって自由や民主主義という基本的価値観に対する共鳴というのはあくまでも建前に過ぎない。本音では、軍事的、経済的に急速に国力をつけている中国に対して日米豪と連携して対抗することをインドは追求している。
  クアッドを日米豪が民主主義対権威主義という価値観の対立軸で考えているのに対して、インドは地政学的な勢力均衡の原理で考えている。ウクライナ戦争に対してインドが日米豪と共同歩調をとることは今後もないことが今回のクアッド首脳会合で明確になった。

 この結果に安堵(あんど)しているのがロシアだ。ロシアの認識では、日本が議長国をつとめたクアッド首脳会合で、バイデン大統領が目指すクアッドの準軍事同盟化計画が頓挫してしまったのである。>(バイデン氏が失敗した対ロシア「準軍事同盟化」計画 | | 佐藤優 | 毎日新聞「政治プレミア」 (mainichi.jp) 

 

バイデンの思惑とは別に、ウクライナ戦争でインドは日米豪とともに歩むことはない。バイデンの計画は潰えた。
岸田首相の上記会見での発言も、アメリカから一歩引いているように思えるのは小生の気のせいだろうか。