「孤独の宰相」(柳沢高志著)ともう一冊から少し。

 

「孤独の宰相 菅義偉とは何者だったのか 」から

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菅義偉前首相に密着した日本テレビの政治部記者による優れたノンフィクションだ。

本書のテーマはいかにして菅義偉前首相が総理の座を去ったかだ。安倍元首相がつくった”機関”を引き継ぎながらなぜ菅氏は敗れたのか、なかなか面白い読み物だった。

 

このとき、多くの地域で感染者数は急増していた一方で、重症化率や重症者用の病床使用率は、緊急事態宣言のレベルまでには達していなかった。しかし、専門家は、首都圏や大阪府への緊急事態宣言発出が必要だと主張し始めていた。菅も悩みを深めていた。
「今日も、東京は3865人だが、重症者数はそこまでは増えていないですね」
「そうなんだよ。でも、みんな新規感染者数だけに目を奪われてしまっている。今日も、大阪の松井(一郎)市長から連絡があったけど、大阪は重症者用の病床使用率が2割くらいだから、宣言は出してほしくないと言うんだよ」
「では、大阪には宣言を出さない?」
「いや、出さなければ、専門家はダメでしょう。難しいよね」
そして、国民へのメッセージを求める尾身について、不平を漏らした。
「尾身先生は、ワクチンの効果の話を全然してくれないよね。重症化防止に効果がある抗体カクテル治療についても、まったく触れない。それで“メッセージを出せ”とばかり言うんだよ。でも、もうここまで来てしまったら、収束させるにはワクチンしかないんだよ」
 7月30日、政府は、首都圏の3件と大阪府に対し、緊急事態宣言を8月2日から31日まで発出し、さらに東京と沖縄への宣言を31日まで延長することを決定する。菅は記者会見で、「今回の宣言が最後になる覚悟で対策を講じる」と語った。この日の記者会見では、いつも以上に声はか細く、悲壮感を漂わせていた。

 

国民に選挙で選ばれたわけでもない分科会の尾身茂会長が、何らの効果のある公衆衛生対策をするわけでもないのに、菅首相に”メッセージを出せ”と執拗に迫り続けた。

一方で苦境にあった菅首相も、公邸を訪れた福井県知事らの「新型コロナの感染は飲食時の会話が原因」という調査結果に飛びつき、飲食店の営業時間短縮にのめり込んでいく様子が描かれている。

「時短営業が有効である」という根拠はない。

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木村盛世氏と和田秀樹氏の対談本「なぜ日本は勝てるはずのコロナ戦争に負けたのか?」には、こういう箇所がある。

── 話は厚生労働省クラスター対策班の古瀬氏に戻ります。

彼は、「私は、接触機会を20%に下げられれば『1カ月後に流行が1000人以下になりますよ』と数字を出しているだけだ。これに基づいて公衆衛生の専門家が『これを達成するために時短営業がいいのではないか』と考える。その案を持って今度は分科会に行く。(今は)分科会に行くと経済の専門家がいたり、企業の社長さんがいたり、自治体の首長さんがいる。そういう方と話し合って『じゃあこうしましょう』と出た結果が時短営業だ」とも述べています。

(中略)

和田「時短営業が有効である」という根拠はありませんからね。

木村 そうです。

── しかも「『シミュレーションが外れたら”謝罪しろ”とか”辞めろ”と言われるが、そもそもお金をもらっていない状態で辞めるも何も、謝罪するも何もない』とコメント」とありますが、お金をもらっている、いないの問題ではなく、政府に助言しているのですから、影響力がありますものね。

木村 謝ってはいけない、誤りは認めてはいけないというのが、官僚やこういった人たちの本分みたいなところですから。

159~161頁

 

この国のリーダーのレベルはどうなっているのかと思わない人がいるだろうか。

 

参考:「ヒデキとモリヨのお悩み相談」チャンネル

 

YouTubeには木村盛世氏と和田秀樹氏のチャンネルがある。

人流抑制一辺倒尾身会長が今さら方針転換 何故?

「要は、二進も三進もいかなくなってきたということですよね。」
「(欧米の変化を見て尾身さんは)ちょっとヤバいと思ったんでしょうね」


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