ウクライナが抱える5大課題は解決不可能だ

ウクライナが抱える5大課題は解決不可能だ

ANDREW KORYBKO

 

長らく延期されていた米国のウクライナ支援は、大々的に宣伝されてきたものではなく、せいぜいロシアのますます急速な前進のペースを一時的に減速させるに過ぎないことを、ほとんどの西側諸国が気付き始めている。ロシアがウクライナの悲惨な反攻を利用して軍事的・戦略的主導権を取り戻すにつれて、紛争のテンポは徐々に激化している。ウクライナが抱える問題は膨大で多面的だが、それらはすべて次の5つの要因に何らかの形で関連している。

 

  1. ロシアの軍産複合体はNATOの軍産複合体を凌駕し続けている。
    ロシアは、とうの昔にNATOとの「ロジスティック競争」/「消耗戦」に勝利しており、それが、過去18ヶ月間、ロシアが地歩を固め続けた理由だ。経済制裁はクレムリンを破綻させることに失敗し、生産に必要な資源は容易に入手でき、破壊工作は組立ラインに何の影響も及ぼさなかった。
  2. ウクライナは枯渇した軍の補充に苦労している。
  3. 装備や兵力が少ないほど、新たな防衛施設の建設が難しくなる。
    ロシアが最近ドンバスで地歩を固めているペースは、ウクライナの既存の防衛線にかつてないほどのストレスを与えており、前線のさらに後ろに新たな防衛線を構築することを余儀なくされている。ゼレンスキー大統領は昨年末にこの作業を行うよう要求したが、ロシアの進撃を食い止めると同時にこの任務を遂行するための装備や兵力が不足しているため、ほとんど進展していない。
  4. 政情不安はウクライナにぶら下がっているダモクレスの剣だ。
    ウクライナ諜報委員会はまた、ゼレンスキー大統領の任期が切れる来月5月21日頃に政情不安が爆発する可能性があると警告した。権威主義、汚職、強制徴兵、深刻な経済問題、そして現実的な終盤戦の欠如のすべてがウクライナ人を激怒させている。
  5. ウクライナは、アメリカよりもよく知っていると思い続けている。
    ワシントン・ポスト紙は、昨年夏の反攻の失敗に関する2部構成の事後分析レポートで、反攻が失敗した理由の一つは、ウクライナが米国の助言に耳を傾けることを拒否したためだと明らかにした。この問題はゼレンスキーに起因しており、最近では、より戦術的に重要な目標を犠牲にして、米国を無視して、ロシアのエネルギーインフラを攻撃するよう部隊に命じたという形をとった。しかし、実際にはアメリカ自身の責任であり、マスコミは彼を「人間の中の神」だと思い込ませた。

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これらの解決不可能な課題が重なり、(ウクライナの)シルスキー最高司令官が解決できない本格的な危機をウクライナに生み出した。そのため同氏はウクライナのパートナー国に対し「困難な作戦上、戦略上の状況は…悪化する傾向にある」と率直に伝えた。  ウクライナがドニエプル川以東のまだ支配下にある地域を非武装化し、緩衝地帯に変えることに同意しない限り、夏までに前線が崩壊し、降伏かNATOの介入につながる可能性がある。

出典:毎日新聞