ワクチンだけではなかった ── 鈴木宣弘著『農業消滅』に書かれた日本の大問題

 

ワクチンだけではなかった。日本の食料の大問題。
誰だって命と健康を守りたい。

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食糧自給率38%、種子に至ってはわずか8%

著者は、先進国と最貧国を隔てる現在の食料システムを持続可能なものにしないと2050年頃には日本も飢餓に直面すると警告している。

  • 2008年の米の不作時の教訓=輸出規制は簡単に起こる。
  •  現在の日本の食料自給率38%だが、今回のようなパンデミックなどが起こり各国で輸出規制が行われると2035年頃には飢餓を迎えることもあり得る。
  • 農業従事者の低賃金、高齢化と後継者がいないこと加え、飼料(ほぼ100%)、鶏のヒナ(100%)、種子(90%)を海外に依存している。
  •  世界各国とも自国の農業保護のために農業従事者へ補助金を出しているのに、日本は国としての補助金は基本的にないに等しく、これでは大規模農家も潰れてしまう可能性がある。
行き過ぎた自由貿易。コーポラティズム

自由貿易の推進により、日本は米豪カナダの基礎食料(米、麦、トウモロコシ)へ過度に依存させられている。上述のように需給ショックが起これば価格は簡単に高騰する。WTOIMF、日米FTAはこの自由貿易を強力に推進する。TPP11後の日米FTAは「TPP越え」しており、日本はアメリカの圧力の前に食料や農業を犠牲にして、自動車の利益を増やす方針を決めた。日本政府は数十年にもわたる“農業は過保護”というキャンペーンで、日本の農業と食を自動車などの輸出のために差し出してきた。

農業や金融だけではない。漁業法改定、森林二法、水道民営化などが推進されているが、これは国家の私物化(コーポラティズム)だ。著者は日本の場合、「国家戦略特区」は「国家私物化特区」であるともいっている。

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「国産農産物は安全」という神話の崩壊

  • タイは2019年10月、農薬のパラコートや殺虫剤のクロルビリホスを使用禁止にしたが、アメリカの抗議でグリホサートは禁止できなかった。日本はこの全部を使用している。
  • 有機栽培において中国は既に世界第3位の生産国になり、EUも2030年までに大胆な有機栽培化を達成する計画を打ち出した。
グローバル企業への種子の「便宜供与」

日本で進行中のグローバル種子企業への8つの「便宜供与」は下記のようになる。


①種子法改正、②種の譲渡、③種の無断自家採種の禁止、④「遺伝子組み換えでない」表示の実質禁止、⑤全国農協連合会の株式化(協同組合のままだと買収できないから)、⑥GMとセットの除草剤の輸入穀物残留基準値の大幅緩和、⑦ゲノム編集の完全な野放し、⑧農産物検査法の関連規制改定(輸入米を含む様々な米の流通促進)

主要プレイヤーはモンサントとバイエル

種子法廃止により、国ではなく民間企業が種子を提供することになった。これは各国の公的種子や農民の自家採種の種をグローバル企業開発の特許種子に置き換えるものだ。いま日本は種まで遡ると野菜の自給率は8割ではなく8%である。これを可能にしたのは<私企業→アメリカ政権→日本政権>という指令だ。コーポラティズムである。

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その他のヤバい事情

その他に以下のような大問題が起きている。

  1. グリホサートGMO野菜、防カビ剤の農薬イマザリルの解禁。2017年12月25日、日本政府はグリホサートの摂取限界値を6倍に緩和。グリホサートは腸内細菌を殺す。ジュディ・マイコヴィッツ博士がワクチンとともに最も警告を発しているのがこのグリホサートだ。
  2. 防カビ剤のOPP(オルトフェニルノール)を「食品添加物」と表示して使用を許可。
  3. 2019年5月、BSEの恐れがあるアメリカ牛の月例制限を撤廃
  4. アメリカ産、オーストラリア産牛肉には成長ホルモンであるエストロゲンなどが入っており、アメリカ牛肉には国内基準の600倍のものも見つかっている。EUアメリカ産の牛肉をやめて17年(1989~2006年まで)で乳がん死亡率が45%減った国もある(アイスランド)。日本の消費量の70%を占める輸入牛肉はほとんど検査されていない。牛や豚の餌に混ぜる成長促進剤であるラクトパミンは、発がん性があり、人間に中毒症状を起こす。
  5. rBST(またはrBGH)という乳牛への遺伝子組換え牛成長ホルモンを打ってできた牛乳や乳製品が、港でチェックを受けず消費者の元へ運ばれている。それらを飲食するとインシュリン様成長因子(IGF-1)が増加し、発がん性リスクを増加させる。

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2023年4月に行われるnon-GMOの表示厳格化

現在は5%未満の「意図せざる混入」であれば「遺伝子組換えでない」と表記できるが、この表示厳格化以降は不検出(実質的に0%)の場合のみにしか表示できなくなる。これでは良心的に頑張ってきた製造者が非GM食品を作るインセンティブをなくしてしまうだろう。

 

まるで日本とアメリカの国民にターゲットを絞って、有害な農薬や遺伝子組み換え作物/ホルモンが投入されているかのような観を呈している。