バイデンが「一つの中国」を認めたわけ

おカネのないアメリカは中国に大きく譲歩した

バイデン、「一つの中国」を認める

バイデン米大統領と中国の習近平国家主席は10日(米東部時間9日)、電話会談した。米中首脳の電話会談は2月以来約7カ月ぶりで、90分にも上った異例の長さであった。

米中首脳、協力分野を模索=紛争防止「双方に責任」―2月以来の電話会談 | 時事通信ニュース (jiji.com)

この電話会談でもっとも注目すべき点は、バイデンが「一つの中国」を認めたことだ。
2020年8月に出された米民主党の新要領では、それまでの要領にあった「一つの中国」が削除された。つまり、台湾を支持するということだったのだが、今回の会談でバイデン/民主党は中国・台湾政策を大転換したことになる。

 

この会談の分析を遠藤誉が行っている。

後退するアメリカーー米中首脳電話会談で「一つの中国」を認め、ウイグル問題を避けたバイデン|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

遠藤はこう述べる。

中国側の正式報道は、中国の外交部サイトにある「習近平アメリカ大統領と電話会談した」が最も信憑性が高い。これが間違っていればアメリカから直ちに修正が求められる。今のところそのような動きはないので、間違っていないものと解釈することができる。

中国語が自由な彼女はこの中国外交部の記事を日本語に翻訳している。

バイデン

一、世界は急速な変化を遂げており、米中関係は世界で最も重要な二国間関係だ。米中がどのように相互作用するかは、世界に大きな影響を与える。

二、米中両国が競争のために対立し衝突に陥るなどという、いかなる理由も(必要性も)ない。

三、アメリカは一度も「一つの中国」政策を変えようと思ったことはない。

四、アメリカは中国と、より率直な交流と建設的な対話を行いたいと心から望んでいる。双方が協力できるような重点事項や優先領域を特定し、誤解や誤判断あるいは予想外の衝突を避け、米中関係を正しい軌道へと戻したいと強く願っている。

五、気候変動などの重要な問題について中国とのコミュニケーションと協力を強化し、より多くの合意を得られることを期待している。

三が最も重要なポイントで、明確にアメリカは「一つの中国」を認めた。遠藤はこのことを嘆く。

今回はウイグル問題も香港問題も口にしておらず、明らかに対中姿勢としては後退していることが見て取れる。

これは「もし可能なら10月に開催されるG20では会ってね」というお願いのためであり、もう一つはアフガニスタンにおける米軍撤退の失敗を言われたくないからだろう。

バイデンがここまで後退したのは、遠藤がいうようにG20アフガニスタンのことだけなのだろうか。

イエレン財務長官はアメリカのディフォルト懸念を伝える

先日ジャネット・イエレン財務長官は、ナンシー・ペロシ下院議長に宛てた書簡の中で、財務省は10月のある時点でお金を使い果たす可能性があると述べた。「利用可能なすべての措置と手元の現金が完全に使い果たされると、米国は私たちの歴史の中で初めて義務を果たすことができない」。すなわちアメリカ合衆国債務不履行(ディフォルト)になるということである。下の記事には、”財務省は先月*債務の上限の停止が期限切れになって以来、現金の余剰を支払いに使用しており、債務不履行の脅威を可能な限り遅らせるために、できるだけ多くの支払いを延期する「特別措置」を採用している。

*債務の上限・・・法令に基づいて財務省が発行できる国債の限度額

9月30日という締切

ZeroHedgeはこう伝えている。

「議会民主党は今月、政治的圧力の完璧な嵐に直面している。彼らは債務の上限の引き上げを必要とする9月30日の政府閉鎖と、穏健な民主党が反対しているにもかかわらず、剃刀のように薄い許容誤差で通過させようしようとしている4兆ドルの立法パッケージをジャグリングしている。」
民主党コンサルタントであるマット・ハウス(元チャック・シューマー補佐官)はNBCニュースに語った。『9月は設定されている実際の締め切りがあり、それらよりもっとも困難な問題に取り組むことを求めています。』」

アメリカ最大の輸入国は中国

米中はお互いにとって最も重要な貿易相手である。またアメリカの最大の輸入国は中国である。

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(出典: アメリカの貿易 - 世界経済のネタ帳 (ecodb.net)

国内債務と異なり対外債務の支払いは”待ったなし”である。毎年1月に続いて9月30日がその期限だ。ここで支払不能であれば二度目の期限は10月中旬で、そこでも支払えないと”不渡り”が成立する。アメリカ合衆国債務不履行、破産である。イエレンの「10月のある時点で」というのはこのことを指している。

アメリカは日本へのF-35等の武器販売等で金策を行ってきたが、それももうネタが尽きている。バイデンの習近平への屈辱的にも見える譲歩は、アメリカには中国へ支払うおカネがないからだ。